戸塚パルソ通信@メール 第159号
戸塚宿を行く(歴史探訪)
vol076
戸塚の民話猫の踊場
踊場
■〒245-0013 神奈川県横浜市泉区中田東1丁目1(踊場駅)
■横浜市営地下鉄ブルーラインで、湘南台方面へ戸塚駅から一駅「踊場駅」があります。
「踊場」は、正式な地名にはなく、また、かつて正式な地名だった時代もありません。
にもかかわらず、この場所は古くから「踊場」と言い習わされてきました。通常「踊場」とは、坂や階段などの急な斜面の途中に所々現れる、小さく平坦な場所のことですが、踊場駅の周辺が「踊場」と呼ばれた由来は、地形ではありません。
■戸塚の民話「猫の踊場」
むかし、戸塚宿に水本屋という醤油屋があった。
商売柄、清潔を保つために、使った手拭いは毎日洗い、干してあった。
ところがある時から、干した手拭いが1本、また1本と無くなるようになった。
怪しんだ主人がこっそり監視していると、夜が更けると、飼い猫が手ぬぐいを咥えて外に出ていく。
後を追うと、裏山をどんどん登ってゆく。
ついたところにはたくさんの猫が。
醤油屋の猫も含め、集まった猫たちは、手ぬぐいを頭にかぶると、見事な踊りを踊っていた。
いつしか、この猫の踊りは戸塚宿の人たちの知るところとなり、猫たちが集まる場所を「猫の踊場」「踊場」と呼ぶようになった。
・踊場駅の踊る猫のオブジェ
東海道沿いに広がる「猫の踊場」のおはなし
この猫の踊場の話ですが、戸塚・泉だけのものではありません。
小田原には「ねこの盆踊り」というそっくりな民話があり、そこでは、猫が踊る時期は、お盆の頃とされています。
同じく藤沢や平塚など、東海道沿いに「猫が夜な夜な踊りに出る」という民話が残されています。
起源がどこか、知る術はありませんが、東海道を人々が行き交ううちに、お話が広まっていったものと思われます。
戸塚と甲斐・類似する民話
面白い関係性が類推できるのは、山梨県の都留地方の伝承です。
都留市谷村の昔話
代官の内田半太夫の飼い猫が、羽織を被って踊っていた、というもので、狐が指導していたり、化け猫になる前に去れ、と諭すところが、踊場の猫に比べて、少し妖怪譚が強いです。
注目すべきは、猫の飼い主が「内田姓」であるということ。「猫の踊場」は、内田本陣の裏山というべき場所に位置しています。また、柏尾川にかかる富士橋は、甲斐の猿橋の材を利用して作られたと言われていますが、大月市と都留市は隣接しており、民話が採録された地域圏内です。
・富士橋

猫と内田と橋
つながりを感じざるを得ません。
・猿橋から富士橋へ
怪談ぽい伝承も
「猫の踊場」の伝承は、現在広く知られているものは「猫が踊って楽しそう」というおおらかなものですが、「裏の踊場」というべき、おどろおどろしい伝承も聞かれます。
現在の伝承の中に「熱いおじやを食べて火傷をしてしまい、猫が遅刻する」というパターンがありますが、それが実は笑い話では済まず、その火傷が元で猫は死んでしまい、化けて出たので、供養塔を立てた、というパターンも見られます。
他にも、恐ろしげな伝承として
・猫の亡霊を鎮めるために念仏講が浄財を集めて供養塔を立てたところ、亡霊が出なくなった
・「五郎兵衛の猫」と名乗る若い女が踊り狂っていたので、供養等を立てたら出なくなった
・猫の踊場は、遊郭で病気になった女郎が物乞いをしていた
・猫の供養塔と言われているものは、実は追い剥ぎや辻斬りにあった人の供養塔である
など、色々見つけることができます。
ほんわかとした話では刺激が少ないと考えたのか、恐ろしげな話をマイルドにしたのか、はたして、真相は?
■踊場駅












